『雨宿りと恋のはじまり』
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女、どこかの軒下で雨宿りをしている。
男、頭に手をおいて走ってくる。

男「うわぁ~。まじ最悪。」
女「・・・。」
男「・・・。」
女「・・・。」
男「・・・雨だね。」
女「そうですね。」
男「・・・。」
女「・・・。」
男「・・・雨宿りに軒下に入ったら、既に雨宿りしてる人がいた。っていうシチュエーションって、気まずいと思わない?」
女「ふふっ。まさに今ですね?」
男「まーね。」
女「でも、なんとなく楽しいと思いませんか? もしも、晴れていたら私たちは会わなかった。って考えると。ちょっとロマンティックで」
男「確かに。そうかもね。こうして初めましての人と自然に喋れるのは、ナンパする手間が省けていいね。」
女「ナンパするんですか?」
男「う~ん。大学生の頃、友達と何回か?」
女「因みに勝率は?」
男「全敗。」
女「あっ。なんか全敗って感じの顔してますよね」
男「どういう意味ソレ?」
女「あっ。褒めてますよ? 良い意味です。良い意味。」
男「そっか。僕の文化では、今の言葉、良い意味で取れなかったわ。」
女「奇遇ですね。私もです。」
男「おい!!」
女「(笑う)でも、大丈夫ですよ。ハゲてないから。私的にはセーフです。セーフ。」
男「フォローになってないよね。それ。」
女「あれ?」
男「でもまぁ。ハゲたらアウトなら、極力、雨に当たらないようにしないと」
女「なんでですか?」
男「あんまり雨に打たれるとハゲるって聞くじゃん。」
女「えっ。そうなんですか?」
男「知らなかった? 酸性雨ぅ、みたいな?」
女「あぁ~。理科の授業でやった気がします。」
男「女より、男の方がハゲやすいのも雨が原因らしいしね。」
女「何でですか?」
男「ほら。学校の帰り道とか傘でチャンバラとかしてて、男の子って濡れ放題じゃん。その弊害」
女「へぇ~。」
男「ごめん。嘘です。」
女「何で嘘つくんですか!!」
男「ちょっとからかってみようかなって。」
女「酷いです。」
男「でも、まさか信じるとは・・・」

女「ははっ。・・・・・・私、騙されやすいんですよね・・・。ずっと信じてたのに、騙されて・・・。でも、謝られて・・・。信じて、また騙されて・・・。でも、疑いたくなかった。信じたかった。」
男「・・・何かあったの?・・・あっ、いや。言いたくないなら別にいいんだけど。」
女「・・・私、ずっと付き合ってる彼氏に何度も浮気されてるんです。でも、謝ってくれた。もうしないって。だから・・・」
男「・・・。えっと、」
女「なんちゃって。騙されましたか?」
男「はぁ!?」
女「さっきのお返しです。騙されたから」
男「はぁ。びっくりした。もうやめてよ」
女「お返しです。ってば。」
男「でも、真に迫ってたよね。女優になれるよ。」
女「あれ? 私、人気女優ですよ?」
男「嘘!?」
女「嘘です。」
男「またかよ。」
女「えへ」
男「にしても、あせったよ。あんな場面なれてないから。なんて声かけるべきかな?って。気まずさMAXだったよ。」
女「えっ?」
男「だって。何かすっごい辛そうだったから・・・。」
女「う~ん。そんな男、別れなよ。とかが月並みな意見じゃないですか?」
男「まぁ。そうかもだけどさ。でも、そんなに苦しんでるんなら、そんな無責任なことも言えないかな。って。もしかしたら、別れられない理由とかがあるのかもしれないし。」
女「別れられない理由・・・。特にないです。ただ謝ってくれたし・・・。変わってくれるかもって、期待しちゃって。」
男「・・・ホントに、嘘の話なの?」
女「・・・えっ。何言ってるんですか。ホントですよ!!ホント!!」
男「ホントの話?」
女「じゃなくて。ホントに嘘の話です。」
男「あぁ~。そういうこと。」
女「はい。そういうことです。」
男「でも。やっぱりアレだね。僕としては、やっぱり別れた方がいいって思うかな。そんな男、ロクでもないよ。だって何回も浮気してるんでしょ? 男としてサイテーだって思うよ。・・・それに、こんな可愛い子にあんな辛そうな顔させるんだもん。」
女「・・・。」
男「あれ? もしかして、はずした・・・。」
女「かなり・・・」
男「ありゃりゃ。」
女「(笑う)」
男「(笑う)」
女「あぁ~。かなり面白いですね。」
男「心外だな。カッコいいって言ってくれないと。」
女「あぁ~。カッコいい。カッコいい。」
男「あからさまに思ってないだろ!!」
女「そ・・・んなこと・・・ありませ・・んよ?」
男「ホントかよ。」
女「(笑う)」
男「(笑う)」
女「あっ。雨止みましたね。」
男「ホントだ。」
女「・・・。」
男「・・・。」
女「・・・じゃあ、行き(ますか。)」
男「あの。また今度どっかでお食事でも。どうですか?」
女「あっ。いいですね。行きたいです。じゃあ、連絡先教えますね。」

男女、携帯を出して、連絡先を交換する。

男「ありがとうございます。また連絡します。」
女「待ってます。」

男、去る。

女「別れられない理由か。ふふっ。1つもないのかも。」

女、メールを書く。

女「もう、あなたを信じないことにします。」

女、携帯を閉じる。

女の後ろに、大きな虹が一橋かかる。

終幕



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