イーナンの割れ目
―――――――――――――――――――――
cast
メイン
 佐伯みなみ
 市原かづさ

サブ男
 石丸かいと
 滝口はじめ

サブ女
 大岩 かよ
 藤木あかり

お嬢さま
 ハナコ
 マリア
 カレン

佐伯電力
 佐伯直志

県庁
 中田美穂
 県職員×4




舞台の中心には大きな台。
階段で昇り降りが出来るようになっていて、電球で装飾されている。
上手に学校の机が2つ、ひっついて並んでいるぐらいの大きさの台。

開幕
電話がひっきりなしに鳴り、県職員たちの謝罪の声「申し訳ございません。早急に対処いたします。」が聞こえる。
上手にサス。

県職員1「何とかならんのか!?」
中田美穂「我々がエネルギーを使い始めて何百年という月日が流れた今。石油、石炭、天然ガス、その他、全てのエネルギー資源が底をつきました。そして、国が責任を放棄したが為に、それぞれの県が使う全ての電力をそれぞれの県で賄わなければならなくなってしまったのです!!」

県職員たちから「そんなことは分かっているんだよ!!」「早く本題に入れ!!」などの野次が飛ぶ。

中田美穂「ですから。それらのエネルギー資源に代わる代替エネルギーを見つけ出せばよいのです!!」
県職員2「だから何なんだよ!?」
中田美穂「えっ?」
県職員2「だからその代替エネルギーをどうやって見つけ出すんだと聞いているんだ!!」
中田美穂「・・・分かりません。」

県職員たちから「ふざけるな!!」「意味が無いだろ!!」などの野次が飛ぶ。
野次がフェードアウトする。
SE:ニュースのテーマ曲
県職員のサスを消して、台のサスと台の電球を点ける。
台には、佐伯直志だけで、マスコミは声だけ
SE:シャッター音

マスコミ「新エネルギーを開発したというのは本当ですか!?」
佐伯直志「はい。」
マスコミ「おぉ~!!」
マスコミ「これで日本の電力不足も解決も近いですね!!」
佐伯直志「すみません。まだ工場の規模も小さいので、まだこの県に送るのが限界だと・・・。」
マスコミ「・・・。」
佐伯直志「ですが、いずれは日本中。いえ、世界中に電気を送って、この地球を守っていきたいと思っています!!」
マスコミ「おぉ~。」
マスコミ「視聴者の皆さんに何か一言を!!」
佐伯直志「皆さんの元に安全な電気と幸せをお届けします。って言っても、まだ県に電力発売の許可を取らなきゃ駄目ですけどね。恰好付かなくスミマセン。」
マスコミ「(笑う)」

台のサスが消えて、県職員たちのサスが点く。

県職員3「凄いですね!!」
県職員2「まさに救世主だな。」
県職員1「早急に佐伯電力に電力発売の許可を出せ!!」
県職員4「佐伯電力ばんざ~い!!」

県職員たち全員が「ばんざい!!」と言い続ける。
声がフェードアウトしていき、サスが消える。
明かりが点くと、台の前には学校の机が用意されていて、サブ男女が話している。
台の上には、メインがいる。

かづさ「何でわざわざ夏休みに学校来なけりゃいけねえんだよ。」
みなみ「皆で自由研究するんでしょ。」
かづさ「そうなんだけどさぁ。」

台を階段で下りる。

2人「おはよー」(メイン)
かよ「ねえねえ。みなみのお父さんって、佐伯電力の社長さんってホント?」
みなみ「うっ、うん。」
2人「きゃー。カッコイイ。社長令嬢じゃん。」(サブ女)
あかり「だからいつも気品に溢れてたんだね。」
みなみ「えぇ~。あかりには負けるよ。」
かよ「だからいつも素敵だったんだね。」
みなみ「まあ、かよよりはね。」
かよ「ひどい。」
はじめ「逆玉だね。」
かいと「逆玉だな。」
2人「結婚してくださ~い!!」(サブ男)
かづさ「やめんか!!」

かづさ、サブ男をたたく。

かいと「いってぇ~。」
はじめ「痛~い。」
かいと「悪い悪い。みなみはかづさの物だったよな。」
かづさ「だからそんなんじゃねぇ。って。」
はじめ「往生際が悪いぞ。かづさ。」
かづさ「うるせぇ。ったく。何のために集まったんだよ。」
かいと「えっ、かづさがみなみのことを好きかどうか調べる為じゃなかったっけ?」
かづさ「後で病院送りな。かいと。」
かいと「ごめんなさ~い。」
はじめ「あれ? 何で集まったんだっけ・・・?」
かいと「後で頭の病院行って来い。はじめ。」
はじめ「ありゃりゃ。」
かよ「あのさ。自由研究のことなんだけど、さっき話しててね。佐伯電力について調べることにしたらどうかな? って。ねっ?」
かいと「やっぱり救世主だろ。」
あかり「そうそう。私たちがこんな風に生活出来るのは、佐伯電力のおかげだしね」
はじめ「もう感謝してもしきれないくらいありがたいし。」
かよ「出来るだけ多くの人に伝えたいよね?」
はじめ「佐伯電力は凄いんだよぉ~。って。」
かづさ「本心は?」
4人「みなみがいれば調べるの楽そうだしね。」(サブ男女)
かづさ「声揃えんなぁ~」
かよ「で、どうかな?」
みなみ「私はいいよ!!」
かづさ「俺も、いいけど。」
はじめ「じゃあ、決定!!」
全員「いえ~い!!」
かいと「ふふふ。は~はっは!! 今年の夏は地獄の8月31日を迎えなくてすみそうだぜ!!」
あかり「残りの夏休み、何しよっかなぁ。」
はじめ「海でしょ。海でしょ。それから、海!!」
かづさ「テーマが決まっただけで、何にも進んでないんですけど・・・。」



かいと「くっ、市原かづさ!! お前という奴はぁ~。何で○%$¥#$!%&」
かよ「もう現実に引き戻さないでよ!!」
はじめ「あぁ~! 市原かづさ。さては、スパイだな!!」
かづさ「な!? くくくっ!!バレちゃ仕方がない。そうだ、俺は悪の集団・・・トロピカル・ホスピタルのスパイだ!!」



あかり「みなみ、何か自由研究に使えそうな情報ないの?」
みなみ「う~んとねぇ。」
かづさ「無視しないで。」
かいと「トロピカル・ホスピタルてWW」
かよ「南国の病院WW」
はじめ「ゆっくり出来そうではあるよねWW」
みなみ「悪要素は一切無いけどねWW」

お嬢さまたちが、階段から下りてくる。

ハナコ「うっわ。最悪ですわ。どうして夏休みにまでこんな醜い顔を見なくてはいけませんの?
2人「ホントですわ。」(マリア&カレン)
かよ「見たくないなら帰ればいいじゃん!!」
ハナコ「何を仰っているのかしら?私たちはこれから自由研究をしなきゃならないんですの?愚民の皆さんがお帰りになられたらいかがかしら?」
2人「ホントですわ。」(マリア&カレン)
かよ「うちらだって、自由研究してるんだけど。」
ハナコ「あら、失礼。てっきり、旅行に行くお金もない庶民同士で慰め合っているのかと思いましたわ。」
かよ「ちゃんと調べてますぅ~。」
ハナコ「因みに何について調べているのかしら?」
かよ「ふふっ。佐伯電力についてよ!!」
ハナコ「佐伯電力の何について?」
かよ「・・・。」
みなみ「イーナン発電について調べるってどうかな?」
かよ「何それ?」
みなみ「電気を作るうちの発電法だよ!!」
あかり「あっ、良いと思う!!」
かよ「どうやら、とっても深~い研究が出来るみたい。参ったか!!」
ハナコ「くっ。」
かづさ「企業秘密とか大丈夫なの?」
みなみ「あっ。」
ハナコ「あら。あまり捗っていないようですわね。おーほっほっほ。」

はじめが、後ろからこそっとハナコをくすぐる。
ハナコの高笑いが爆笑に変わる。

ハナコ「ギャハハハッ。ヒィヒィ。なっ何をなさるのですか!」
はじめ「てへ。」
かよ「先ほど、うちらのことを醜い顔だとか何だとかのたもうていらっしゃいましたようですけど、今のあなたの顔も大概、醜いですことよ。」
ハナコ「はぁはぁ。行くわよ!! マリア。カレン。」
2人「はい!! ハナコ様!!」(マリア&カレン)
ハナコ「その名前で呼ばないで!!」

お嬢さま、上手の机で話し合いを始める。

はじめ「・・・ハナコって名前嫌いなのかな?」
かいと「マリアとカレンに比べて、和名だからじゃね?」
はじめ「なるほど!!」
かよ「みなみぃ。他に何か良い情報はないの?」
みなみ「う~ん。ごめん。思いつかない・・・。」
かづさ「じゃあさ。みなみのおじさんに直接聞いてみたら?」
みなみ「ん?」
かづさ「直接おじさんに聞いた方が早いんじゃない?」
みなみ「あぁ。じゃあ、今から家来る?」
はじめ「みなみちゃん家、行きた~い!!」
かよ「私も行きた~い!! 絶対、大きいよね。」
あかり「だねだね!! 社長令嬢の気分、味わっちゃえるよね。」
みなみ「じゃあ、レッツ、ゴー!!」

メイン&サブ男女、捌ける。
地明かりを消し、台のサスと台の電球を点ける。
台には、佐伯直志&中田美穂がいる。

中田美穂「初めまして。私、愛知県庁電力制御課の中田美穂と申します。」
佐伯直志「私は、佐伯電力の取締役社長、佐伯直志です。」
中田美穂「存知上げております。電力制御課一同、佐伯電力さんには大変感謝していますので。」
佐伯直志「感謝・・・?」
中田美穂「うちに来る電気が無いと不便だ。なんていう苦情も凄い数になっていて。」
佐伯直志「県庁にそんな苦情言った所でどうなるんだ。って話ですよね。」
中田美穂「えぇ。」
佐伯直志「今日は、イーナン発電の開発データを見たいと伺っておりますが・・・?」
中田美穂「はい。電力制御課としましては、国を救うほどの成果ですので補助金や功労賞などを考えていまして、その為の調査をさせていただこうと思って伺いました。」
佐伯直志「えっ! ホントですか!?」
中田美穂「決定ではありませんが。」
佐伯直志「ありがとうございます。」
中田美穂「いえ。県庁も佐伯電力さんに乗っかって苦情を減らそうとしているだけですので。」
佐伯直志「はあ・・・。」
中田美穂「失礼しました。それでは早速調査に入りたいのでお約束の資料を見せて頂けますか?」
佐伯直志「はい。こちらでしたよね?」
中田美穂「ありがとうございます。」
みなみ「ただいま!!」

地明かりが点く。
学校の机が片付けられていて、
メイン&サブ男女が台の下にいる。

佐伯直志「みなみお帰り。」
みなみ「ただいま。」
あかり「見て見て。超豪華。すっごい光ってる!!」
かよ「私、お嬢様ざーすよ。おほほ。」
佐伯直志「その子たちは?」
みなみ「夏休みの自由研究で佐伯電力について調べることになったから、お父さんに話を聞きたいんだって。」
かいと「ぜひぜひお聞かせ下さい!!どうして俺はこんなにイケメンなのかということを!!」
はじめ「寝言は寝て言うものだよ。」
佐伯直志「ん?」
かづさ「気にしないでください。」
佐伯直志「ああ。悪いけど、今、お客さんが来てるから・・・」
中田美穂「私は構いませんよ。資料を読ませていただいておりますので。」
佐伯直志「そっ、そうですか? すみません。」
中田美穂「いえ。」
佐伯直志「じゃあ、何を聞きたいんだ?」
かよ「はいは~い!! あの人は誰ですか?」
はじめ「愛人ですぞぉ。」
佐伯直志「県庁の人です。」
はじめ「あっ、賄賂って奴ですね。」
佐伯直志「違います。」
かいと「佐伯電力の社長、賄賂で県職員と密会!! なかなかキャッチーだよな。」
はじめ「だねだね。」
かづさ「どこの週刊誌だよ。」
はじめ「週刊・電力少年!」
あかり「エネルギー資源が底をついたと聞いたのですが、佐伯電力さんが電気を供給出来るのはどうしてですか?」
佐伯直志「わが社が独自開発した、イーナン発電のおかげだよ。」
あかり「どういうものなんですか?それ。」
佐伯直志「新物質のイーナンから出るエネルギーを電力に変換するんだ。」
かいと「開発は大変でしたか?」
佐伯直志「そりゃそうだよ。この研究を進めるには、凄くたくさんのお金がかかったし、研究が佳境を迎えてる時なんて、夜も眠らずに、研究員たちと研究に打ち込んだりもしたよ。」
あかり「イーナン発電の開発にはどれくらいの時間がかかりましたか?」
佐伯直志「そうだねぇ。この研究は佐伯電力を興した時からずっと進めていたから・・・。」
かよ「こうなることを予測して?」
はじめ「すごい。占い師!!」
佐伯直志「まさか。そんな予知力は無いよ。地球温暖化っていうのは知ってるよね?」
かづさ「はい。」
佐伯直志「この環境問題は、人間が快適な生活を求め、電気を使って、二酸化炭素が出来ることで起きているんだ。」
はじめ「電気を使い過ぎないようにしまーす」
かよ「えぇ~。うち絶対ムリぃ~。電気使わないなんて死んじゃうぅ~。」
あかり「わたしも・・・。自信ないかも。」
佐伯直志「そんなことする必要ないよ。だからこそのイーナン発電だからね。美しい地球を守りながら、皆の明るい未来も守りたい!それが、研究を始めた理由だよ。」

自由研究発表の練習(ヒーローショーっぽく)

かよ「キャ―――――――――――――――!!!!!!!」
かづさ「くははは。死ねぇ。死ねぇ!!!!!!」
みなみ「大変!」
あかり「大変ですよ~。」
みなみ「わる~い人間が電気を使って地球をいじめてるよ。」
あかり「いじめてるんです!!」
かよ「くっ、苦しいよ。誰か、誰か助けてぇ!!」
みなみ「さぁさぁ。どうしようか?」
あかり「そうだ!イーナンレンジャーを呼ぼう!」
みなみ「いくよ。イーナンレンジャー!!!」
かいと「やっほー。イーナンレッド参上!!」
はじめ「ずる~い!! 僕がレッドだ!!」
かいと「いや。レッドは俺だから。」
はじめ「はぁ。しょうがないなぁ。じゃあ、」
かいと「だな。」
はじめ「2人共、レッドで。」
みなみ「えぇ~!!」
かいと「お前は俺が死んでも守る!! 地球を守りながら電気を発電。イーナンレッド!!!!」
はじめ「僕は君の味方だよ? 人類の為に電気を発電。イーナンレッド!!!!」
みなみ「正義の味方、イーナンレンジャーさんが来てくれたよ。」
あかり「カッコいい!!」
みなみ「げしげし。悪の人間は足蹴にされ、その扱いはまるでサッカーボールのような。しかし、蹴られる度にうめき声を上げることだけが彼が唯一ボールではないことの証拠でした。」
あかり「ぶちぶち。悪の人間はぐちゃぐちゃのハンバーグの種のように叩かれこねられ、小さな小さな、本当に小さな肉片と成り果てました。」
かづさ「ぐぎゃ―――――――――――――――!!!!!!!」
みなみ「これでめでたし!!」
あかり「イーナン発電は、」
6人「佐伯電力!!」(メイン&サブ男女)

SE:ちゃんちゃん

中田美穂「ふふふっ。」
あかり「あっ。面白かったですか?」
中田美穂「うん。面白かった。自由研究の成功、間違いなしだよ!!」
かいと「よっしゃー!!」
はじめ「そうだ。愛人さんも発表見に来てよ!!」
かよ「いいね。愛人さんぜひ来て下さい!!」
中田美穂「時間があればね。」
佐伯直志「お父さんは誘ってくれないんだ・・・。」
みなみ「お父さんも見に来てね。」
佐伯直志「うん! 行く!!」
かづさ「じゃあ、今のを原稿に起こしてこうぜ。」
はじめ「えぇ~!! めんどぉい。」
かいと「うんうん。」

メイン&サブ男女、楽しそうに話続ける。

中田美穂「いつから私は佐伯さんの愛人なんですか?」
佐伯直志「あっ、それは・・・」
中田美穂「冗談ですよ。さっきの話聞いてましたので。」
佐伯直志「はあ・・・」
中田美穂「とてもすばらしい方針だと思いましたよ。」
佐伯直志「ありがとうございます。」

SE:爆発音(めっちゃ大きく)
全員、悲鳴や足音を立てる。
暗転
電話がひっきりなしに鳴り、県職員たちの謝罪の声「申し訳ございません。只今、調査中です」が聞こえる。
上手のサスが点く。

県職員2「8月12日午後2時、佐伯電力第一発電所が爆発をしました。」
県職員3「この事故による死亡者はいませんが、多数の負傷者が出ています。」
県職員4「尚、佐伯電力第一発電所から半径5km以内は有毒ガスが発生している為、地域住民に避難指示を出しています。」
県職員3「事故の原因は、発電量の急激な増加による機械トラブルだと思われます。」
県職員2「苦情の電話も鰻上りなので、早急に対策を立てなくてはなりません!!」
県職員1「ふむ・・・。では、佐伯電力の工場無期限閉鎖とする。」
中田美穂「待ってください!」
県職員1「何だ!? 急を要するんだぞ!!」
中田美穂「佐伯電力は現在の電気の要ですよ!! それに、原因がはっきりしているんだからそれさえ気をつければ閉鎖にする必要はないじゃないですか!?」
県職員1「県民を納得させるには、理屈じゃなくて、目に見える動きが必要なんだ!?」
中田美穂「で、でも。県民の皆さんだって佐伯電力が無くなったら困るじゃないですか!?」
県職員1「しかし現在、苦情がたくさん入っているのは事実。まずは、この苦情を納めることを最優先に考えなくてはならないんだ!!」
中田美穂「・・・。」

上手のサスが消える。

明かりが点くと、学校の舞台で、サブ男女が集まって話している。

かいと「爆発ビビったなぁ~」
はじめ「ね。漏らしちゃうトコだったよ。」
かよ「ちょっとやめてよ。汚いなぁ~。」
はじめ「酷くない!?」
あかり「凄かったよね。」
かよ「イーナン発電怖い!!」

みなみ、教室に入ってきて、サブ男女に話しかけようとするが、サブ男女の話しに気付いて止まる。

あかり「怖~い」
かいと「なぁ、見ろよ。掲示板、めっちゃ盛り上がってるぜ!!」
あかり「何て?」
かいと「う~ん。イーナン発電の批判?」
かよ「へぇ~。」
あかり「あっ。テレビでもやってたよね。イーナン発電の批判」
かよ「見た見た。ハゲのおっさんがドヤ顔で解説してたよね。」
はじめ「う~ん。駄目ですねぇ~。」
かよ「似てるぅ~。」
かいと「おい。これ見ろよ!!」
あかり「イーナン発電の事故を社長がワザと起こした・・・?」
はじめ「うっそ!!」
かよ「サイテーだよ。サイテー!!」
かいと「あっ。工場稼働停止だって。」
あかり「しょうがないよね。大きい事故だったし。」
はじめ「自業自得だよね。」
かよ「もっと被害増えるかもだしね。良い判断だよ」
かいと「県庁、やるぅ~!!」
はじめ「愛人さん、流石だね!!」

お嬢様、止まっているみなみに話しかける。

ハナコ「あら、みなみさん。今日は独りでいらっしゃるの? 他の皆さんの所へは行かないのかしら?」
カレン「あっ! そういえば貴女のお父様の会社、営業停止になってしまったんでしたわね。」
マリア「大変ですわね。しかし、仕方がありませんわよね。たくさんの人が怪我をしたのよね。」
カレン「今も見えない毒ガスが人に影響を与えていると伺いましたわ。」
ハナコ「なるほど。だから、ですのね。」
マリア「可愛そうなみなみさん。」
カレン「他の皆さんは酷いですわね。」
ハナコ「でも仕方がありませんわ」
マリア「そうですわね。」
カレン「だって」
お嬢さま「あんな爆発を起こしてしまったんですもの。おーっほっほっほっほ」

みなみ、笑い続けるお嬢さまに掴みかかる。

ハナコ「やめて。痛い。痛い!!」

サブ男女が飛び出し引き離す。

かいと「何してんだよ!!」
あかり「大丈夫。ハナコ?」
はじめ「怪我したら、どうするの?」
かよ「ハナコにまた何か言われたの?」
みなみ「皆だって、一緒じゃん!!」

みなみ、唇を引き結び、階段を駆け上り捌ける。
かづさ、捌けるみなみとすれ違う。

かづさ「おい。みなみ!!」

かづさ、サブ男女に近づく。

かづさ「みなみ、どうしたんだ?」
はじめ「みっ、みなみがハナコに掴みかかったんだよ!」
かいと「どーせ、ハナコが何か言ったんだろ!!」
マリア「あなたたちだって、おっしゃっていたじゃありませんの!!」
カレン「ハナコ様だけのせいにしないで頂戴!!」
かよ「私たちが何を言ったっていうのよ!!」
あかり「もしかして・・・さっきの話・・・」
かよ「あれは・・・イーナン発電・・・じゃん・・・。ねっ?」
かづさ「・・・。」

かづさ、階段を駆け上り捌ける。
暗転
SE:デモの音とマスコミの声
「謝罪の言葉はないんですか!?」
「出て来て説明してください!!」
「爆発についてどう思われますか?」
「こうやって逃げ続けるんですか!?」
台のサスが点く。
台の上には佐伯直志&中田美穂がいる。
中田美穂、窓の外のデモとマスコミ(後ろにある態)を見ながら

中田美穂「凄い人数ですね。」
佐伯直志「はい。」
中田美穂「酷いですよね。少し前までは救世主だとか言って、電気だって使ってたのに・・・。爆発したら手のひらを返して、責めたてるなんて。」
佐伯直志「仕方ないですよ。それだけの酷い事故を起こしてしまったんです。」
中田美穂「でも!」
佐伯直志「皆が救世主って言って電気を使ってくれて、笑顔になって・・・。嬉しかったです。」
中田美穂「・・・。」
佐伯直志「でも、たくさんの人が怪我をした。もっとたくさんの人が汚染された空気を恐れて避難した。こんな恐ろしいエネルギーを作り出してしまったんです。」
中田美穂「・・・事故の原因は、エネルギー発電量の急激な増加ですよね? だったら、発電量を抑えれば安全です!! だから、頑張って・・・」
佐伯直志「無理です!! 毎日テレビでは、佐伯電力爆発とか、発電所閉鎖とかばかりがやっていて、皆が皆、言ってるんですよ。佐伯電力は最悪、稼働停止で良かったって・・・。」
中田美穂「で、でも・・・」

暗転
SE:パソコンのキーボード音とネットの書き込み
「佐伯電力まじワロタ」「佐伯死刑」「悪魔」「氏ね」「佐伯電力人殺し」「イーナンオワタ」「無能電力」「脱イーナン宣言キタ━━━━━━!!!」などなど
プロジェクターでホリに映す
明かりが点く。
みなみ、体操座り
かづさ、走って出てから少し逡巡してからふざけた口調で声をかける。

かづさ「み~なみちゃん!」
みなみ「お父さんさ。私が子供の頃から、研究、研究でさ。全然、会えなくて。正直、イーナン発電なんて出来なくたって良いって思ってたんだ。でもさ、やっぱり嬉しかったんだ。イーナン発電が完成して、皆が喜んでくれた時は。だってお父さんや他の研究員の人が何度も失敗しながら頑張って来たとこ見てるから・・・。」
かづさ「・・・。」
みなみ「佐伯電力って、そんなにいけないことしたのかな。」
かづさ「・・・。」
みなみ「確かにたくさんの人に怪我を負わせたし、有毒ガスでたくさんの人に迷惑掛けてるよ。でもさ。毎日、ネットで騒がれて、テレビで騒がれて、家の前で騒がれて、あの事故ってそんなに酷かったの!? 悪かったの!?」
かづさ「・・・そりゃあ、酷かったよ。一瞬で、あれだけの人が怪我したんだもん。」
みなみ「・・・。」
かづさ「でもさ、悪いかなんて分からないよ。だって俺は何も知らないもん。イーナン発電の仕組みとか、イーナン発電の安全面がどうだったか。とか。だから悪いかどうかの区別なんてつけられない。それに、かいとたちだって何も知らねーじゃん。」
みなみ「・・・。」
かづさ「そんな何も知らねー奴に何言われたって、とり合う価値なんてこれっぽっちもないって。」
みなみ「でも。現にイーナン発電は爆発を起こしたよ。安全面の問題があったかもしれないよ。」
かづさ「だからさ。事実として幾らイーナン発電で爆発が起ころうと、その原因も深く知らないような奴に言われたことを気にして、みなみが傷つく必要は全く無いんだって。」
みなみ「・・・。」
かづさ「ホントに悪いのは、何も知らずに流れにテキトーに乗っかってデモしたりする人たちなんだって。その流れをテキトーに加速させるテレビやネットなんだって。その流れをテキトーに作り上げる世論なんだって。」
みなみ「・・・。」
かづさ「だからみなみは、・・・元気出して。」
みなみ「ありがと。」
かづさ「それにまあ、そのうち変わっていくでしょ。世論も。」
みなみ「何で?」
かづさ「だってイーナン発電に生涯を捧げる!! って感じのあのおじさんだぜ? こんな事態にうじうじしてないっしょ。みなみみたいに」
みなみ「ひどっ。」
かづさ「だってぇ~。うじうじしてたし。うじうじ。うじうじ。」

かづさ、追いかけてくるみなみをちょこまかとかわしながらうじうじポーズ(体操座り)を続ける。
みなみ、ふと立ち止まって、

みなみ「そうだね。お父さんもこんなことでへこたれたりしないよね。よっしゃー!私も出来ることやんないとね。」
かづさ「よっ!みなみさん。その意気ですよ!!!」

みなみ、油断して近づいてきたかづさを捕まえる。

みなみ「つーかまえた。」
かづさ「ぎゃ――――――――――――――――――!!!!」

暗転
上手のサスが点く。

県職員1「まだ言っているのか!?」
中田美穂「はい。どうしても稼働停止に納得出来ないんです。」
県職員1「なら、佐伯電力の社長はどう言っていた?」
中田美穂「・・・仕方の無いこと。だと言っていました。」
県職員1「だろうな。世間も佐伯電力も納得しているのに、お前が蒸し返す必要がどこにあるんだ。」
中田美穂「でも、世間は佐伯電力の裏に生身の人間がいることに気付いていないんです!生身の人間がいて、そして傷ついていることを知らないんです!」
県職員1「だからどうした!?傷ついていようがいまいが、世論はイーナン発電に、憤り、恐れているんだ。お前が私情を挟む権利はないだろう?」
中田美穂「でも・・・。」

県職員、中田美穂を嘲り笑う。
暗転
明かりが点くと、メインが学校の机で自由研究の作業をしている。

みなみ「ビッグバンが起き、宇宙が誕生してから137億年・・・」
かづさ「突然どうしたの!?」
みなみ「自由研究発表の話し始めどうしよっかな?と思って」
かづさ「ごめん。せめてもう少し戻ってこよっか?」
みなみ「あぁ~。訳分かんない!」
かづさ「訳分からんのは俺だからね!?」
みなみ「ぶぅ~。じゃあ、かづさが考えてよ!!」
かづさ「しょうがねえな。じゃあ・・・。」

サブ男女が、階段を下りて出る。

かよ「みなみ・・・」
みなみ「何?」
かよ「えっ。」
みなみ「何の用?」
かよ「みなみ、ごめん! 何も考えなしで」
かいと「俺もごめん!」
みなみ「別にいいよ。」(全然よくない)
かいと「事故が起きてから、テレビでもネットでも、佐伯電力が批判されててさ。」
はじめ「あの爆発は、保険金目当てで社長が故意に起こしたなんていう書き込みもあって・・・。」
あかり「そんな風に思ったら、みなみに何か近寄り辛くて」
かよ「みなみがハナコに掴みかかるとこ見たら、何か・・・。」
みなみ「そんなの知らないよ!! 私は、傷ついたもん! 友達だと思ってたのに!?」
かいと「・・・。」
かよ「・・・。」
あかり「・・・。」
はじめ「友達だよ・・・。だから、ごめん・・・」
みなみ「そんなの! そんなの、勝手過ぎるよ!!!!」
かいと「ごめん。」
あかり「ごめん。」
かよ「ごめん。」
はじめ「ごめん。」
みなみ「もういいよ。思い出したくない・・・。」

お嬢さま、階段を下りて出る。

ハナコ「みなみさん! あの・・・。あのですね。さっ先ほどは失礼つっつかまつりましたわ。」
みなみ「はっ?」
ハナコ「いくらイーナン発電が怖くても、それをただのご息女であるあなたに言っても仕方のないことでしたわ。」
カレン「つい、恐ろしさが募ってしまっていたのですわ。」
マリア「傷つけてしまったのなら、謝りますわ。」
みなみ「別にハナコたちに言われたぐらいで傷ついてはいないけど・・・」
ハナコ「まあ、そうでしたの。流石、みなみさんは心がお広いですわ。」
みなみ「イラッとはしたけどね」
お嬢さま「すみませんでした!!」
みなみ「・・・あのさ。イーナン発電ってやっぱり怖いの?」
ハナコ「怖いわ!! あんな一瞬の出来事でたくさんの人を怪我させてしまったのですから。」
マリア「今でも、有毒ガスでたくさんの人が家に帰れないのでしょ。」
ハナコ「もしも、被害者の中に私が入っていたらと思うと・・・」
マリア「そんな。ハナコ様がお怪我をなさるなんて。信じられませんわ!!」
カレン「何てことをするのよ!!佐伯電力!!」
マリア「佐伯電力なんて、稼働停止で問題ありませんわ!!」
カレン「行きましょ!!」
マリア「えぇ。」

カレン&マリア、捌ける。

みなみ「・・・。私に謝りに来たんじゃなかったの!?」
ハナコ「あの方たちは少々頭のネジがお緩みになっているから、許してあげてくださる?」
みなみ「まあ良いけど・・・。」
ハナコ「でも、ごめんなさい。あのように大きな事故がいつ起きるか分からない発電だなんて、正直恐怖を感じるの。だから、申し訳ないけど稼働停止には賛成するわ。それでは、ごきげんよう。待ちなさい。マリア!カレン!」

ハナコ、捌ける。

みなみ「あのさ。イーナン発電の爆発が、酷かったことは分かった。でもさ、皆には味方でいて欲しかった。友達だと思ってたし。イーナン発電が開発された理由とかも知っているはずだから・・・。」 サブ男女「ごめん」(揃わないように)
はじめ「自分の発言に何も考えて無かったんだよ。皆、言ってるから。って・・・。」
かよ「ホント。サイテーなのは、私たちだよね。」
かいと「自分で何も考えず、周りの言葉、鵜呑みにしてさ・・・。」
はじめ「あんな噂だって、あんなカッコいいお父さんがする訳ないって、言いきれたはずなのに」
あかり「ネットが言ってて、テレビが言ってて、周りが言ってて、何かね、あっ、そうなんだ。って。」
かいと「つられてネットに書き込んだ。歪んだ価値観を元にした、歪んだ噂を書きこんじゃった。」
はじめ「何か、批評家になったみたいで楽しくてさ。」
かよ「みなみの傷ついた顔見るまで分からなかった。佐伯電力に石をぶつけているつもりだった。みなみやお父さんに当たってるなんて、思ってなかった。ホントにごめん。」
みなみ「違うよ。もし私がお父さんの子供じゃなかったら、ネットに書き込んでたかもしれない。佐伯電力サイテーって。」
はじめ「もうしないよ。絶対!!」
かよ「正しいかどうか分からないような言葉を鵜呑みにして、責めたりしない。」
かいと「だな。これからは、ちゃんと調べてから責任持って発言してこうぜ!!」
みなみ「うん。」
あかり「・・・。ねぇ。もしさ、調べた情報が違ってたら?」
かよ「えっ?」
あかり「だから。調べた情報が必ずしも正しいとは限らないじゃん。それで、間違った情報をもとに発言しちゃったら?」
かいと「でもそれは、ネットとかじゃなくて、しっかりした所が出した情報を元にすれば・・・」
あかり「でも、偽装とかもあるじゃん。絶対、正しい情報ってどうやって見分けるの?」
かよ「じゃあ・・・。最初っから、何も、言わなければいいんじゃない?・・・そうだよ!!そしたら、誰も傷つけずにハッピーじゃない!!」
かいと「でも、それじゃあ、何も変わってかないぜ。」
かよ「でも、何も言わなきゃ、誰も傷つかないんだよ。一番、良いじゃない!?」
あかり「そうかも。そしたら、みなみ傷つけることも無かったもんね・・・。」
かいと「でも、今回のだって、誰も発言しなかったら、工場が稼働したままだったかもしれないぜ」
かよ「それでいいじゃん!! そしたら、みなみも傷つかなかったよ。」
かいと「それじゃあ、たくさんの人が恐怖を感じたままじゃない?」
かよ「じゃあ、工場稼働停止した方が良かったって?」
かいと「違うよ。違うけどさ・・・。誰も何も言わなかったら、たくさんの人の恐怖がそのまま残っているってことだろ?それも違う気がする・・・。」
かよ「たくさんの人の。って、それが、人の意見に引っ張られる。ってことじゃないの?」
みなみ「私は、たくさんの批判ですっごい傷ついたけど、ホントに恐怖を抱いてる人がいて、言われた批判がその人たちの切実な思いだったんなら、私は傷つく資格がないのかもしれない。受け入れるしかないんだと思う。」


はじめ「あのさ・・・。」
あかり「・・・何?」
はじめ「あのさ。意見を言うとか、言わないとかじゃなくてさ。自分の意見に、どれだけの責任を持てるかだと思う。人に流されたりしずに、しっかり考えてさ、自分が思うホントの意見を言うべきなんだよ。」
あかり「その意見が、間違ってたら?」
はじめ「うんと。間違ってたら、ちゃんと違ってました。って訂正してさ。また、言えば良いんじゃないかな。誰の意見にも流されてない自分の意見を・・・。」
あかり「じゃあ、間違っててもいいのかな・・・。」
はじめ「だって僕らがしれる情報なんて、あんまりないもん」
かづさ「そうそう。でも、何も言わなかったら、その立場にいる人だけで世の中作られちゃうだろ。」
はじめ「だから、僕らなりにしっかり情報集めて、しっかり考えて、発信していけばいいんだよ!!」
あかり「そっか。」
みなみ「じゃあ、しっかり考えて、佐伯電力のこと発表しよ。手伝ってくれるんでしょ?」
かよ「何言ってんの?当たり前じゃん!!」
かづさ「じゃあ、発表成功させるぞぉ!!!」
6人「おぉ~~~~~~!!!」(メイン&サブ男女)

台のサスが点く。

佐伯直志「何で君はそんなにしつこくうちに来るんだ!!」
中田美穂「私は、佐伯社長が娘さんたちに言っていた言葉に胸を打たれました。佐伯社長はこんな事故だけであの思いを消せるんですか!?」
佐伯直志「こんな事故。ってたくさんの人に怪我を負わせたんだぞ!! どうしようもないだろ!!」
中田美穂「でも、事故の原因だって、発電量の増加っていう再発を防げるような内容じゃないですか!? それなのに、佐伯社長が諦める意味が分かりません。」
佐伯直志「諦めるって何だよ!! 子供に言ったことなんて、どうせカッコづけて言ってみただけで本心なんかじゃないんだよ!! いいから帰ってくれ!!」
中田美穂「私は、あの言葉が佐伯社長の本心だとと思っています。」
佐伯直志「君が思っているだけだろ。」
中田美穂「娘さんたちだって、きっと佐伯社長の思いを受け止めているはずです。」
佐伯直志「そんな訳ない!!」

暗転

明かりが点く。

BGM
自由研究発表の準備が始まる。(大きな紙にまとめたり、辞書を引いたり)

みなみ「かいと、絵上手すぎない!?」
かいと「ふっ。まあな!!」

メイン&サブ男女、かいとを囲んで褒める。
ひとしきり盛り上がってから、

かよ「てかさ、確かに上手いけどさ・・・。何故に、ザビエル?」
かいと「なんてったって、50代男性のファッションリーダーだからな!!」
かよ「主に頭が?」
かいと「そうそう。ザビってるでしょ?あの人とか。あと、あの人も」

かいと、観客席のハゲを指差す。

かづさ「やめるんだ。かいと!! きっと・・・。きっと彼だって、アー○ネイチャーで、頑張っているんだよ。」
かいと「・・・。すみませんでしたぁ~。」

各々、作業に戻る。

かづさ「なあ。ここ何色が良いと思う?」
2人「オレンジ!あっ!!」(はじめ&あかり)
はじめ「ハモっちゃったね。」
あかり「うん・・・。」

うつむいて、照れる2人(はじめ&あかり)

かいと「何だよ。このラブコメ展開!!」
かづさ「とにかくオレンジだな。」
はじめ「うん。」

かづさ、オレンジのペンを取ろうとして同じくペンを取ろうとしたみなみの手にあたる。

2人「あっ。」(メイン)

メイン、見つめ合う。
どちらからともなく目をそらして

かづさ「ごめん・・・。」
みなみ「ううん。」
かいと「何だよ!! どいつもこいつも!!」
かよ「お酒。誰か強いお酒をちょうだい!!!」
かづさ「うるさい。」
みなみ「そうだぁ。そろそろ原稿作らなくちゃねぇ~。」
かいと「あからさまに話変えたな。」
かづさ「ホントだぁ~。原稿を作らなきゃぁ~。」
はじめ「急げ急げぇ~。」
あかり「頑張るぞぉ~。」
かいと「まあ、いいけどさ。」
みなみ「ビッグバンが起き、宇宙が誕生してから137億年・・・」
かづさ「だから、おかしいって!!」
かよ「コホン。我々がエネルギーを使い始めて何百年という月日が流れ。石油、石炭、天然ガス、その他、全てのエネルギー資源が底をつきました。」
かいと「そんな時に、現れたのは」
あかり「佐伯電力のイーナン発電だったのです!!」
6人「Q!!」(メイン&サブ男女)
みなみ「そんなイーナン発電はどうして生まれたの?」
6人「A!!」(メイン&サブ男女)
はじめ「はいは~い。コウノトリさんが運んできたんだよ!!」
かづさ「断じて違います。」
はじめ「うぅ。へそ噛んで死んでやる。」
かづさ「斬新な自殺方法だな。」
みなみ「イーナン発電は、地球環を守りつつ人間が快適に過ごす為に生まれました。」
かいと「従来の発電では、・・・何だっけ?」
あかり「温室効果ガス。」
かいと「温室効果ガスが発生してしまう為、地球が悲鳴を上げていました。」
はじめ「痛いよぉ~。痛いよぉ~。」
あかり「じゃあ。人間が電気を使うのを我慢しなくちゃいけないの?」
2人「ムリムリムリムリ!!」(かいと&かよ)
かづさ「そこで。」
6人「イーナン発電!!!」(メイン&サブ男女)
かいと「・・・。何だっけ?」
あかり「温室効果ガス。2回目」
かいと「温室効果ガスが発生しない画期的な発電方法なのです!!」
はじめ「だから。地球おだんご化もヘッチャラピーなんだよ!!」
かづさ「残念。美味しそうだけどハズレ。」
みなみ「この発電法を作り出す為に、たくさんの人が関わって作り上げたのを私は知っています。」
かづさ「全ては、地球を守るため。そして人間の明るい未来を守るために。です!!」
あかり「確かに佐伯電力は爆発を起こしました。」
かよ「しかし、イーナン発電を生み出した人たちの思いは残っています。」
かいと「その思いは、皆さんが投げた無責任な言葉により傷つきました。」
はじめ「思いで済めば警察は要らないと思うかもしれません。」
みなみ「でも、」
6人「佐伯電力のイーナン発電はこれまで皆さんを守ってきて、そしてこれからも地球の、人類の未来を守り続けると思います!!!」(メイン&サブ男女)

SE:拍手
お嬢さま&佐伯直志&中田美穂、出る。

ハナコ「皆さん方にしては、なかなか良かったんじゃないのかしら」
マリア「えぇ。悔しいですけど佐伯電力の思いは伝わりましたわ。」
ハナコ「くっ、悔しくなんかないわよ!! 何を言っているのかしらマリアさん。私たちの発表の方がもっと凄いじゃないの!!」
カレン「さっきは、佐伯電力も悪くないわ。なんて、言ってらしたくせに。」
ハナコ「カッ、カレンさんまで何を言ってらっしゃるのかしら。私がそんなっ」
かよ「へぇ~。うちらの発表に心打たれっちゃったのかしら。」
ハナコ「そんな訳ないでしょ。このアンポンタン!!」
かよ「何よ。すっとこどっこい!!」
ハナコ「オタンコナス!!」
かよ「いかれぽんち!!」
ハナコ「くっ。いっ、行きますわよ。マリア。カレン!」
2人「はい。ハナコ様」(マリア&カレン)
ハナコ「その名前で呼ばないで!!」

お嬢さま、捌ける。
メイン&サブ男女、笑い合う。

中田美穂「まだ、仕方無いって、諦めますか?」
佐伯直志「いや。もう少しあがいてみるよ。」
中田美穂「そうですよ。イーナン発電に私たちの明るい未来がかかっているんですからね。」

かづさ「伝わったんじゃない?」
みなみ「うん。」

暗転
県職員のサスが点く。

県職員1「今更、何の用なんですか?」
佐伯直志「佐伯電力の工場閉鎖の取りやめを要求します。」

県職員、「何を言っているんだ!」「勝手過ぎるだろ!」「被害を考えろ!」などの野次を飛ばす。

佐伯直志「先ほどお渡しした資料にも記載されていますが、イーナン発電は、発電のどの段階に於いても、二酸化炭素が一切発生しない、今後、人類を救う電力です。」
県職員4「だからって、爆発をする危険があるのは。」
佐伯直志「今回の爆発事故は、確かにたくさんの被害を出しました。しかし、原因は、発電量の急激な増加による機械トラブルです。充分に再発を防止出来るものだと、佐伯電力は考えています。」
県職員1「だが世論は・・・。」
中田美穂「それに、電気を充分に使えないことからの苦情の電話も最近は増えてきています。」
佐伯直志「イーナン発電ならば、電力を皆さんに供給することが出来ます。」
県職員3「しかし、工場の稼働を始めたら、その苦情の電話がくることは目に見えています。」
県職員2「それにもしまた爆発があれば、今度は国民がどう動くか分からないんだぞ!!」
佐伯直志「もしなんてありませんよ。今後、絶対に爆発させません!!」
県職員2「そんなの分からないだろ!!」
中田美穂「電力制御課が、また爆発をすることが無いように、発電量を制限すればいいじゃないでしょうか?」
県職員2「そんなことして、爆発したらどうするんだ!? 世論の矛先が県庁に向くだろ!!」
中田美穂「私たちの仕事は何ですか!? 世論を窺って、佐伯電力が県民に受け入れられてる時は、賞だ。補助金だ。って言って、世論のご機嫌取り。受け入れられなくなったら、工場稼働停止。って言って、世論のご機嫌取り。こんなことなら、誰だって出来ます。そんなのが私たちの仕事なんですか? 私たちは何もしてないじゃないですか!?」
県職員1「分かった。」

県職員、「えっ。」「どうゆうこと?」などのとまどいの声を漏らす。

県職員1「中田、イーナン発電が安全に稼働出来る発電量を、しっかり管理出来るように準備してくれ。」
中田美穂「はい!!」
県職員1「佐伯社長、協力していただけますか?」
佐伯直志「ありがとうございます。」

中田美穂&佐伯直志、捌ける。

県職員2「どうしてですか!? 世論が・・・」
県職員1「さてと、俺たちは俺たちの仕事、しないとな?」
県職員 「・・・。」(234)
県職員1「県庁のホームページに於いて、爆発の原因や、再発を防ぐことが出来ること。これからイーナン発電の発電量は電力制御課が管理すること。とにかく、県民の方が、安心出来るように、出来るだけの情報を開示するぞ。」
県職員 「はい。」(234)

上手のサスを消して、
台のサス・台の電球を点ける。

かよ「イーナン発電、また許可されたんでしょ?」
みなみ「うん。」
はじめ「僕らの自由研究の発表のおかげだよね。」
かづさ「全く関係ねえ。」
はじめ「えぇ~。でも、学校のホームページにも僕らの写真載ったじゃん。」
かづさ「関係ない。」
はじめ「ぶぅ~。」
かいと「でもまあ大成功だったよな。」
かよ「うん。あのハナコにも伝わったもんね。」
あかり「そうだ。お父さんにお礼を言いたいんだけど。」
みなみ「あぁ~。お父さん今忙しいんだよね。」
あかり「何で?」
かづさ「工場稼働の条件で、あらゆる危険を想定した研究を行って、イーナン発電をより安全に規模を拡大していけ。って。なっ?」
みなみ「そうそう。もし出来たら、日本全国の電気を送れるんだって。」
かよ「えぇ~。凄いじゃん。」
かいと「ホントに人類の救世主だな!!」
みなみ「まぁ。出来たらの話だけどね。」
かづさ「完成するまで、またおじさんは、研究ばっかりの日々か?」
みなみ「まあね。」
かづさ「寂しいねぇ?」
みなみ「皆がいるから寂しくないもん!!ねっ?」

サブ男女、それぞれ反応する。

かづさ「よし、完成までは、俺らも節電しないとな。」
みなみ「そうだね。節電節電。」

みなみ、スイッチを切る動作。
暗転

佐伯直志「出来た!!完成したぞ!!!」

舞台に光が溢れる。
全員の笑い声が聞こえる。

終幕



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